日本の畳の故郷は熊本だった。日本一のイグサの生産地「八代」を知る

和食や着物といった日本文化が、あらためて世界に注目されるようになり、日本伝統の生活用品にも人気が集まっています。日本をイメージさせるインテリアとしてよく知られる畳やござにも、海外の人たちから関心を持たれるようになりました。

畳は、表面部分の「畳表(たたみおもて)」、土台部分の「畳床(たたみどこ)」、縁部分の「畳縁(たたみぶち)」の3つのパーツで構成されています。このうち畳表の材料となるのがイグサです。

実は、日本全体で生産されるイグサのなんと9割以上が熊本県八代市で作られています。日本全国のご家庭やお寺などに敷かれている畳は、ほぼ八代市のイ草から作られていると考えて間違いありません。

なぜこのように八代市は日本のイ草生産の中心地となったのでしょうか?この記事では、九州第二位の八代市と世界が注目する植物原料イグサにスポットを当ててご紹介させていただきます。

日本一のイ草の産地「八代市」ってこんなところ

現在、八代市民の憩いの場となっている八代城跡が示すように、中世の時代より熊本市と並び猛将加藤清正はじめ大名たちの城下町として発展してきた歴史を持ちます。「一国一城」ルールがあった江戸時代にも、例外として熊本県は熊本城と八代城のふたつの城を構えることを許されました。

八代城跡

そしてかつての城下町八代市は、熊本市に次いで熊本県下第2の人口を有しながらも、自然と都市部がバランスよく共存した住みやすい街です。八代市を代表するスポットには、筏流しでよく知られた日本三大急流の一つである「球磨川」、平家落人伝説が残された「五家荘(ごかのしょう)」、肥薩おれんじ鉄道の始発駅八代駅などがあります。

五家荘 樅木吊橋

また、「やつはな」の愛称で知られる「やつしろ全国花火競技大会」には全国から観光客が集まります。毎年秋に行われており、全国から数十を超える有名花火師が集結し技を競いあう西日本で唯一の全国花火競技大会です。

花火師オリジナルの花火やスターマイン(速射連発花火)をが楽しめます。

全国花火競技大会

なぜ八代市でイ草栽培が盛んになったのか?

「八代市い業振興協議会」編纂の「い草歴史年表」によると、熊本県のイグサの栽培面積が全国1位となったのは1968年のことです。もともと、八代がイグサを栽培するようになった理由は、当時の八代の土地は水はけが良くない湿地帯のため作物の出来が悪かったことから、湿地でも育つイグサ作りが始まったといわれています。

また、室町時代の頃から、上流階級において茶の湯が広まり、茶室に多くの畳が必要とされたことからイグサの需要が高まりました。そこで八代の時の領主たちがイグサ栽培を奨励したことも、八代市でイグサ栽培が定着したゆえんです。

しかし、戦後イグサはフローリングの普及、人々の和室離れ畳離れによって、どんどん需要が低くなりました。そのうえ平成9年には、中国産の大量輸入によるイ草の大暴落が起きたことによって日本全国のイグサ農家は大きく減少しました。

この窮状には国も放置できず、セーフガードが発令されたほどです。平成10年の衆議院「い草産地救済に関する質問主意書」には、イグサ農家の救済を訴える文書があり、胸が痛みます。

八代市はこのような苦境の時にもイグサを手放すことはありませんでした。熊本県、熊本県イグサ農業組合他イグサ関係者が一致団結してイ草作りに取り組みました。

そして、イグサの品種改良の研成果として「ひのみどり」が誕生しました。そして、いぐさ栽培に適した土壌改良にも全力を尽くしました。

このような努力が現在の熊本県、ひいては八代市がイグサ生産量ナンバーワンとなった背景にあるのです。

過酷な労働によって得られるイグサ、そして畳表

イグサを苗から育て、収穫までには大変な労力を要する作業を伴います。まず冷たい風が吹きつける11月~12月の田にイグサの苗を植え付け、苗を植えて約7か月目を目安に刈り取ります。

ちょうどそのころは火の国熊本の名の通り、暑さ厳しい6月~7月です。また、同時にいぐさ独特の作業として「泥染め」があります。

収穫したイグサを、染土と呼ばれる粘土の水溶液に浸すことによって、最後の仕上げを行うのです。泥染めには、イグサの乾燥を促進し、いぐさの変色防止や、畳特有の香りを生み出す効果があります。

そして、最後にイグサを畳表として織り上げる作業を経て、やっと一枚の「畳表」が作り上げられるのです。

こんなにあった!イグサの素晴らしい薬効効果!

イグサは、森林の香り「フィトンチッド」の成分を多く含む芳香性の高い植物です。この香りは「集中力の持続効果」を促すといわれており、学習塾などで導入されることが多いのもうなずけます。

また、イグサはハニカム構造と呼ばれる多孔質のため、大変は調湿機能に優れています。そのため、畳敷きの部屋は夏は涼しく冬は暖かいのです。

また、ハウスシック症候群の原因ホルムアルデヒドを吸着する力も強く、イグサ1キロあたり0.14 g ものホルムアルデヒドを吸着することが明らかになっています。

参考論文「北九州市立大学国際環境工学部 森田洋教授 イグサと畳表の機能性 」

世界に誇るイグサ文化を支える八代市

国産畳といえば熊本、そして八代産。自他ともに認める日本最大のイ草生産地八代市を後押しするように、近年イグサへの注目度は高まっています。現在イグサ製品は若い女性たちにも人気があり、最近ではヨガマットにもイグサが使われ他製品が販売されるようになりました。

また、このようなイグサ人気や熊本県八代県のイ草生産の努力の影響から、2017年3月には、農業機械大手のクボタが「イグサ」を収穫するための機械「いぐさハーベスタ」を、9年ぶりに発売すると発表しました。機械の販売を熱望していたイグサ農家には願ってもない朗報でした。

このように、現在もう一度イグサは見直され、イグサ生産を支える動きが活発になり、またイグサを使ったモノづくりが進化しています。八代発イグサは、今後さらに多くの人々の目に触れ、その素晴らしさが伝えられてゆくことでしょう。

ピックアップ記事

関連記事一覧